乞食blog -5ページ目

靴下

駅前のゴミ箱で夕刊を拾って読む。
「ホームレスが新聞なんか読んだって」と、
通行人の心の声が聞こえて来るので、
影になって少し暗くなるが、
歩道に背を向けて座りなおす。

10分もしないうちに、足先が寒くなってくる。
今日は靴下を3枚重ねて寝よう。
明日あたりはノボルくんの漫画喫茶に
甘えてしまおうかなぁ。

冷たい詰め合わせ

朝。いつものようにのんびり起きると、
遠くにリアカーを押して缶拾いに出かける
山ちゃんの姿が見えたので、
おーいと声をかけてみるが反応が無い。

少しイラっときて、もう一度、おい!と呼びかけると
一瞬振り返り、ペコリと頭を下げて行ってしまった。

何なんだその態度は。昨日のノリさんといい、
今朝の山ちゃんといい、最近妙に冷たい。
キンさんもピリピリしているし、カズ姉も元気が無い。
こうりゃん先生も木元のじいさんの手伝いをしたり、
新しく入ってきた連中とばかりつるんでいるようだし。
私は何もしていないのに、少しおかしくないだろうか。

イライラを抑えつつ、日課となってしまった
例の自販機のチェックへ。今日も収穫無し。

公園に戻り、昨晩のうちに拾っておいた
ひき肉ケチャップを食べる。
冷たくて不味い。
ああ、ヨシさんがいればなぁ…あの味が恋しい。

二度ある事は

お金の使い道について散々悩んだ挙句、
まだ今週くらいまで宝くじは買える、
との事なので、もう少し悩む事にする。

1000円足らずのお金で、と思うかもしれないが、
我々にとって、現金とは非常に貴重なものなのだ。
私はあまり酒を飲む方ではないが、
多くの仲間は現金を手にすると、
あっという間にアルコールに変えてしまう。
それよりはマシだ。

そんな事を考えながら、
あの幸運の自動販売機までフラフラと歩き
つり銭をチェック。ハズレ。
良い事ばかり、そうそう続くわけが無いのだ。
公園に戻ってパンの耳でもかじろう。

お金の使い道

昨晩、自動販売機で手に入れた小銭だが、
何を買うか散々考えた結果、宝くじを買いにいく事にした。
当たれば3億円だが、まぁそんな上手くいく訳は無いだろう。

3枚しか買えないが、一応銀座の当たると評判の売り場に
明日にでも行くとしよう。
ノリさんにこの話をしたら、

「そんなの当たりっこ無いから
堅実にビッグイシューの仕入れに使った方がいいよ!
来年くらいから売り子もあぶれて
縄張り争いも厳しくなるって噂だし。
早いうちから顔売っといた方が後々楽になるから…」

と、妙に神妙な顔で諭されてしまった。
でもなぁ、と口を濁すと

「じゃあ俺に預けなよ!平和島で倍にしてきてやるよ!」

と、笑いながら手を出してきたので、パチンと叩いて
明日宝くじ買ってくる事にするよ、と笑い返したが、
予想以上にしっかりしたノリさんの言葉に、
少し劣等感のようなものを感じ、
また迷いが生まれてしまった。どうしようかな。

ゴリラーマスク

昨晩、ゴリラマスクを被ったキンさんと、
私がプロレスをする夢を見た。

リングの上で、猪木や馬場のようなタイツを履いた私、
相手はゴリラマスクを被っていたが、
体系や雰囲気で、何と無くキンさんだな、
と解り可笑しくなった私が

「キンさんだろ?なにやってんの?」

と何度訪ねても

「違うって!ヤンのかよ!コノ野郎!」

としか言わず、滑稽なファイティングポーズで、
私の周りをグルグル回っている。
リングサイドには祈るような表情のカズ姉までいて、
それ以上の事はあまり覚えてはいないのだが、
あまりに面白くて、起きてしばらくは、
一人でついニヤニヤとしてしまった。

タイガーマスクならぬ、ゴリラーマスクだな、
最終回はキンさんがトラックに跳ねられて、
ゴリラのマスクを投げ捨てるんだろうか、
なんて考えたら可笑しくて可笑しくて仕方がなかった。

山ちゃんを見つけて、早速この話をしてみると
さして笑いもせず

「タイガーマスクってあれ、梶原一騎のだろ?
オレ、弟と錦糸町で会った事あんだヨ。」

と、ぽつりと言っただけだった。
もっと笑ってくれると思ったのに、
少し拍子抜けだなぁ。