乞食blog -6ページ目

幸運の自動販売機

雨が上がったので、ブラリと街に出てみる。
ボーナスシーズンで年末商戦というやつだろうか。
家電製品のダンボールや、紙袋を抱えた人が多い。

縁遠すぎる世界にまた暗い感情が湧き上がるが、
そんな暗い気持ちも一気に吹き飛ぶ幸運があった。

自動販売機が並ぶ一角でつり銭の返却口に何気に
手を入れた時、チャリンと嬉しい手応えがあった。
お!と手にとって確認すると850円。
大きな現金収入に思わず顔がほころぶ。

さあ次は、と隣の販売機の返却口に手を伸ばすと
またも嬉しい手応え!ワクワクしながら確認すると80円。
850円の次だったのでやや期待はずれではあったが、
ニ連続で手に入れたのは初めてだったので、
かなり興奮し、気持ちが一気に盛り上がる。

さらに80円の方の機械の商品取り出し口に目をやると、
なんと商品まで入っているではないか。
急いで手に取ってみるとまだ温かい缶コーヒーだった。

あまりの事に、つり銭を取り忘れた上に商品まで?と、
少し疑問に思ったが、どちらもありがたく頂戴する。
まだ温かい缶コーヒーを飲みながら公園に戻る。
今夜は臨時収入の使い道を考えながら眠りにつくとしよう。

雨の王将

雨。河川敷の皆は大丈夫だろうか。
シゲさん、ヒロさん、タカ坊。
雨が降るたび心配になるので、
こちらに来ればいいのに、と思うのだが、
台風になろうとも彼らが河川敷を離れたがらない
彼らの気持ちも痛いほど解る。

人が多いところに移動すれば、
その分、通行人の冷たい目に晒される事になるからだ。
雨なんかよりも、人の視線がよっぽど厳しく突き刺さる。
見る側にそういう考えが無かったとしても、
我々にだってそれなりの自覚というものがある。

不衛生な身なりと悪臭。
社会活動に参加していないという劣等感。
そして楽しそうな家族連れやアベックを見る度に
どうしても湧き上がってきてしまう後悔の念と嫉妬心。
そういう自分に対する嫌悪。
負の悪循環に陥ってしまう事も少なくは無い。

河川敷の彼らを逃げている、と言う仲間もいるが、
時には逃げる事も大事なのではないか、と思う。

今日の格言
逃げの一手も時には王手
矢倉穴熊王手飛車取り

山ちゃんの大発明

山ちゃんは朝早くから暗くなるまで空き缶を集めに行き、
二日分ほどまとめから換金しに行くことが多い。
そんな、空き缶集めのプロといってもいいほどの腕前を持つ
山ちゃんが開発した「棒」という秘密兵器がある。

少し重さのある丸太に、木の棒をくっつけただけのものだが、
これを使うと、物凄い勢いで空き缶を潰す事ができる。
足で潰すよりも簡単で、しかも缶がキレイにぺっちゃんこになる。
さすが、山ちゃんはアイデアマンだ。

なんでも、1000個近い空き缶を一日で足で潰したら、
膝を痛めてしまった事があるらしい。
痛みが引くまで、1週間ほど空き缶集めができず大変だったそうだ。
そんな事があってから、これじゃあいかん!と、
考えた末に発明されたのがこの棒だ。
これを作ってから、空き缶集めがぐっとしやすくなったらしい。

今日も山ちゃんは公園の隅っこで棒を使って空き缶を潰している。
金属が潰れる音が公園に静かに響いていた。

クリスマス

駅前がライトアップされた。
そういえば、流れている曲もどこからともなくクリスマス調。
もうそんな季節か・・・。つくづく時の流れは早い。
昼間は単なる木にしか見えないが、
夜になってライトアップされると不思議と幻想的に見える。
甚だ、人間の視覚なんて単純なもんなんだと今さらながら思う。
クリスマスというだけで、
街を歩く人たちが楽しそうに見えるのもそのせいだろうか?

クリスマスプレゼント・・・別れた家族をつい思い出してしまう。

仮面ライダー

母親に手を引かれた小さい男の子が、
おもちゃの刀をブンブン振り回しながら
楽しそうに通り過ぎていく。

「たっくんはホント好きね。仮面ライダー。」
「うん!かっこいいんだもん!」

仮面ライダーって刀なんか使ったっけなぁ、
なんて考えながら、その親子連れを眺めていたら、
母親と目が合いそうになったので、
つい目をそらしてしまった。
自分が嫌になる瞬間だ。