リンチ | 乞食blog

リンチ

昨晩、いつもの自販機を見て公園に戻ろうとした時、
突然5,6人の同業者に囲まれた。
ただならぬ気配だったのでつい身構えると、
その中の一人が、

「おめぇが煽ったんだろが!」

と突然叫んだ。何の事だかさっぱり解らないので、
あっけにとられて無言のままでいると

「おめぇが煽ってやらせたんだろが!おう!」

と、物凄い勢いで詰め寄ってくる。
もしかして、アクマと親分の件だろうか?ハっとする。
しかし、無関係だ!と弁解する前に、また言いがかりか…
とガックリきてしまった。もう、どうにでもしてくれと。

「なんでもテメェが、カンカン入ればモチ食えるって
吹き込んでたらしいじゃねぇか!このクズ野郎が!
アノ野郎、引っ張られる時も笑ってたぜ!」

確かに、センさんの話題になった時、
面白おかしくそんな事を言ったかもしれない。
しかしそれとこれとは話が違うだろう。

「それは…」

と言いかけた時、後ろからドーンという衝撃。
飛び蹴りだろうか。
不意をつかれ、前のめりに地面に倒れた瞬間、
連中が一斉に襲い掛かってきた。袋叩きだ。

こういう時は早いうちに伸びたフリをするに限る。
乞食になりたての頃、酔っ払いに悪態をついて
リンチを受けた事があるが、その時は中途半端に抵抗したせいで、
こっぴどくやられてしまった。

背中を丸め必死に耐えるが脇腹に何回も蹴りが入る。
背中じゃ効かないので、あお向けにしようとしているのだ。
怖い。ひたすら怖い。もう勘弁してくれ。自然と涙が出てきた。

どれくらいの時間が経ったのか解らない。
気が済んだのか、

「おめぇみてぇなクズは乞食以下だ!くたばっちまえ!」

と罵倒の言葉と一緒に、背中に何か硬いものを叩きつけて
走って逃げていった。

リンチから開放された安心感と同時に、
アクマに対する怒り、リンチした連中に対する怒り、
そしてアクマのような人間に心を許しかけた自分が
ただただ情けなく、しばらく立ち上がれなかった。

その場にうずくまり一しきり泣いた後、
フラフラとハウスに戻り毛布に包まったら、また涙が出てきた。
体中が痛み出し、感情が荒れて寝付けない。
ちくしょう。